IKIRO Forest
生きろの森

「生きろの森」プロジェクト – 鈴木貴博

「生きろ」という言葉は、もともと20歳頃につけていた日記の中で自分を励ますために書いていた言葉でした。 作家活動を始めてからも時々「生きろ」と書いては壁に貼ったりしていましたが、まさかそれが自分の表現手段になるとは思いもしませんでした。しかしある頃から、「生きろ」という言葉に自分が支えられているのだと思う ようになりました。そして、1997年ニューヨークで活動していた私は、アートプロジェクトとして「生きろ」と 毎日書き始めます。理由は、混沌とした時代の中で「生きろ」という言葉を書き続ける人がいてほしいという強 い思いでした。その後、私は世界の様々な場所で「生きろ」と書き続け、「生きろ」という言葉を通し様々な環境 で生きる人達と出会いました。「生きろ」に興味があり集ってくる人々から私はエネルギーをもらい、「生きろ」 と書き続けました。彼らとの出会いがなければ、今日まで私は「生きろ」を書き続けることはなかったと思います。

「生きろ」と書き続け20年たった今、私が感じることは2つあります。 ひとつは「生きろ」という言葉自体の響き方が時代の変化にともなって段々と変わってきたということ。 そしてもうひとつは、「生きろ」という言葉のもつ可能性をアートの枠を越えて広げていきたいということ。 この2つを考えた上で、もっと自然に「生きろ」という言葉のもつ魅力を体験できるような場をつくりたいと思い、 「生きろの森」プロジェクトを再び立ち上げました。「生きろの森」は、もともとは2010-2012年に阪神淡路大震 災祈念事業として行った活動でしたが、新しい「生きろの森」はさらにそれを発展させたものとなっています。

「生きろの森」ではレクチャーの後、参加者に2枚の「生きろ」を書いてもらいます。 1枚は自分が持ち帰り観賞するため、もう1枚はこちらで保存しプロジェクトとして展示するためのものです。 ここでは字の上手い下手は関係ありません。大切なのはそれが自分で書いた文字だということです。 それぞれの方が書いた「生きろ」が、それぞれの人にとって何か特別な意味をもつ「生きろ」になればと思います。 また、皆さんの「生きろ」を展示することが、新たな「生きろの森」を生み出すことに繋がってゆけばと願います。

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